鳥谷敬の表情は少なくとも目元を確認する限り、普段どおり「無」に近かった。バットマンに似た黒いフェースガードを装着し、ゆっくりと左打席へ歩き出す。 「代打 鳥谷」 甲子園にコールが響く前にはもう、待ち切れない観客が「ウオーッ!」と絶叫していた。敵味方は関係ない。誰もが手をたたき、感動のあまり泣き…